
前十字靭帯(ACL)をケガすると、手術やリハビリによって長期間スポーツから離れることがあります。
「ケガをして運動量が減ったら、食事はどうすればいい?」
「リハビリ中、筋肉を落とさないためには何を食べればいい?」
「練習を再開したら、食事量も増やした方がいい?」
このように、長いリハビリ期間の中では食事について迷うこともあるでしょう。
ACLのリハビリでは、ケガ直後から筋力トレーニング、ランニング、競技練習へと、身体を動かす量が少しずつ変化していきます。
そのため、ケガ直後に食事量を調整した場合も、リハビリが進んで運動量が増えてきたら、食事も見直す必要があります。
この記事を読めば、ACLの長期リハビリ中に、運動量の変化に合わせて食事をどう考えればよいか分かります!
管理栄養士・スポーツ栄養プランナーが分かりやすく解説します。
Contents
前十字靭帯(ACL)のケガは「長期離脱」だから食事も変化する
前十字靭帯(ACL)をケガすると、手術やリハビリによって競技復帰まで長い期間が必要になることがあります。
その間、身体の活動量はずっと同じではありません。
ケガ直後は思うように動けなくても、リハビリが進めば筋力トレーニングが始まり、さらに走る・跳ぶ・切り返すといった動きや競技練習も増えていきます。
このように、ACLのリハビリでは競技復帰までの間に活動量が大きく変化します。

【リハビリ初期】動けないからと食事を減らしすぎない
リハビリ初期は練習を休み、身体を動かす時間が少なくなるため、体重増加を心配して食事量を減らそうと考えることもあるでしょう。
しかし、エネルギーが不足すると、傷の治りが遅くなったり、筋肉が減少したりする可能性があります。
活動量が減っても、回復に必要なエネルギーを確保することが大切です。
手術前後は、たんぱく質を不足させないことが大切
ACL再建術を受ける場合は、手術前から栄養状態を整えておくことが大切です。
スポーツ傷害の栄養に関する研究では、手術前のたんぱく質摂取が筋肉の維持や回復を支える可能性が示されており、今後さらなる研究が期待されています。
また、手術後は傷ついた組織の修復に必要なアミノ酸の需要が増え、たんぱく質が不足すると傷の治りが遅くなる可能性があります。
手術前から肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを食事に取り入れ、たんぱく質を不足させないようにしましょう。
入院中は、病院で提供される食事を基本にしましょう。
なお、手術前後の食事や絶食については、必ず病院の指示に従ってください。
手術後に食欲がないときはどうする?
手術後は、痛みや吐き気、薬の影響などによって、思うように食事がとれないことがあります。
食事が進まないときは、無理に食べようとせず、看護師や管理栄養士などに相談しましょう。
食べにくい理由や食事量を伝えることで、体調に合わせた食事の工夫や必要な対応を検討してもらえます。
また、発熱がある場合や体調が悪化している場合は、食事の問題だけと考えず、医療スタッフに伝えることが大切です。
体重だけでなく筋肉が落ちていないかにも目を向ける
長期間スポーツから離れるときに気になるのが、筋肉の減少です。
特にACLのケガでは、手術や活動量の低下などによって、太ももの筋肉が落ちることがあります。
この時期に体重だけを見て食事を減らしてしまうと、「体重は増えていないけれど、筋肉も落ちている」ということも考えられます。
リハビリ中は体重の増減だけで食事量を判断するのではなく、筋力の戻り方やリハビリの進み具合にも目を向けましょう。
【筋力回復期】筋肉を戻すための食事を意識する
リハビリが進んで筋力トレーニングが増えてきたら、筋肉を戻していくための栄養も意識していきましょう。
たんぱく質は筋量・機能の回復を支える重要な栄養素
たんぱく質は、長期離脱で減った筋肉を取り戻していくうえで重要な栄養素です。
必要量は年齢や運動量などによって異なりますが、若年アスリートでは1日約1.5g/kg、成人アスリートでは1.2〜2.0g/kg程度が目安として示されています。
また、ACL再建術を予定している成人男性6名を対象とした小規模な研究では、手術前の2週間に1.9g/kg/日のたんぱく質を摂取したグループで、1.2g/kg/日のグループより、筋肉のたんぱく質合成が高い傾向がみられました。
ただし、統計学的に有意な差は確認されておらず、今後さらに研究が必要とされています。
なお、中高生のACLリハビリ中に必要なたんぱく質量については、明確な基準がありません。
成人のACL研究の数値をそのまま当てはめるのではなく、まずは成長期アスリートとして必要なたんぱく質を不足させないことを意識しましょう。
また、靭帯を構成する成分のひとつであるコラーゲンにも注目されています。
ACL再建術後の患者を対象に、コラーゲンやビタミンCなどを含む複合サプリメントを使用した研究もあります。。
コラーゲンと腱・靭帯の関係について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶ 関連記事:筋肉だけ鍛えると怪我をする?スポーツ選手の腱・靭帯を守るコラーゲンの重要性
【競技復帰期】運動量が戻ったら食事も戻す
リハビリが進むと、筋力トレーニングだけでなく、走る・跳ぶといった運動や競技練習も少しずつ増えていきます。
この時期に注意したいのが、運動量は増えているのに、食事量はケガ直後のままになっていないかということです。
リハビリ初期に減らした食事量のままになっていない?
ケガをした直後は活動量が減り、それに合わせて食事量を調整することがあります。
しかし、リハビリが進んで運動量が増えれば、必要なエネルギー量も変わります。
たとえば、
- リハビリの時間が長くなった
- 筋力トレーニングの負荷が上がった
- ジョギングやダッシュが始まった
- ジャンプや切り返しの練習が増えた
- チーム練習に部分的に参加するようになった
といった変化があれば、食事量も見直すタイミングです。
「ケガをしているから」という理由だけで食事量を決めるのではなく、今どのくらい身体を動かしているかを基準に見直していきましょう。
走る・跳ぶ・競技練習が増えたら炭水化物も見直す
運動量が増えてきたら、特に見直したいのが炭水化物です。
炭水化物は運動時の重要なエネルギー源です。
スポーツ傷害の栄養に関する研究でも、運動量が増えるにつれて、炭水化物の必要量も増えるとされています。
ケガ直後にご飯・パン・麺などの主食を減らしていた場合は、走る・跳ぶ・競技練習などが増えてきたタイミングで、主食の量も戻せているか確認してみましょう。
中高生はリハビリ中でも「成長期」
中高生のACLリハビリでは、ケガからの回復だけでなく、成長に必要な栄養も確保することが大切です。
スポーツを休んでいる間も、身体の成長は続いています。
たんぱく質は筋肉や身体をつくる材料となり、カルシウムやビタミンDは骨の形成、鉄は血液をつくるために必要です。
リハビリ中の食事は「ケガを治すため」だけではなく、成長期の身体をつくるための食事でもあることを忘れないようにしましょう。
まとめ|ACLの長期リハビリでは「今の活動量」に食事を合わせよう

ACLのリハビリは長期間にわたり、その間に活動量も少しずつ変化していきます。
リハビリ初期は食事を減らしすぎず、筋力を戻していく時期はたんぱく質をしっかり摂る。
そして、走る・跳ぶ・競技練習が増えてきたら、主食を含めた食事量も見直していきましょう。
中高生は、リハビリ中でも成長期です。
ケガからの回復だけでなく、成長する身体に必要な栄養も欠かせません。
リハビリの段階に合わせて食事も少しずつ変えながら、競技復帰に向けて身体を整えていきましょう。
参考文献
Nutritional Considerations and Strategies to Facilitate Injury Recovery and Rehabilitation
発行元:Journal of Athletic Training
著者:Smith-Ryan AE, Hirsch KR, Saylor HE
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7534941/
Youth and Adolescent Athlete Musculoskeletal Health: Dietary and Nutritional Strategies to Optimise Injury Prevention and Support Recovery
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著者:Alcock R, Hislop M, Vidgen HA, Desbrow B
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11587028/
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Efficacy and Tolerability of Progen, a Nutritional Supplement Based on Innovative Plasma Proteins, in ACL Reconstruction: A Multicenter Randomized Controlled Trial
発行元:Orthopaedic Journal of Sports Medicine
著者:López-Vidriero E, et al.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30834280/

執筆者:丸井 遥
管理栄養士、スポーツ栄養プランナー、オンラインフードクリエイター。
病院・介護施設で栄養指導や栄養管理を経験。現在はフリーランスとして、スポーツ栄養教材の制作やダイエット栄養相談、記事執筆などを行っている。
また、栄養や子育てに役立つ情報をnoteでも発信中。
専門的な内容を、わかりやすく実践しやすい形で伝えることを大切にしている。









