
水分補給をしているのに疲れやすい、後半になると動けなくなる…。
それは、「飲む量」だけでなく、「飲み方」や「飲み物の選び方」が関係しているかもしれません。
暑い環境での水分補給は、熱中症予防だけでなく、パフォーマンスを維持するためにも欠かせません。
体内の水分がわずかに不足するだけでも、集中力や判断力、持久力の低下につながります。
この記事では、管理栄養士・スポーツ栄養プランナーの視点から、熱中症を防ぐための正しい水分補給の方法や、運動時間・発汗量に応じた飲み物の選び方についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 水分不足がパフォーマンスに与える影響
- 水分補給のタイミングと量
- 飲み物の選び方・使い分け
- 熱中症を防ぐポイント
Contents
熱中症と水分補給の関係とは?パフォーマンスへの影響

体の約60%は水分でできています。水分が不足すると体温調節がうまくできなくなり、集中力や持久力などのパフォーマンスに影響します。
水分不足になると、次のような変化が起こります。
- 集中力・判断力の低下
- 持久力の低下
- 体温の上昇
- 疲労感の増加
体重の約2%以上の脱水は、持久性パフォーマンス低下の目安とされています。
また、日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」では、前半で体重の約2%の脱水がある選手は、ハーフタイムに水分補給をしないと、後半の運動能力が約20%低下すると紹介されています。
この数値は、競技種目や運動時間、気温・湿度、暑さへの慣れなどの条件によって変わります。
しかし、体重の約2%を超える脱水は、パフォーマンス低下や熱中症リスクを高める重要な目安とされています。
水分補給は、熱中症を防ぐためだけではありません。
最後まで本来のパフォーマンスを維持し、自分の力を発揮するためにも欠かせないコンディショニングの一つです。

熱中症を防ぐ水分補給の方法

水分補給のタイミングと量の目安
スポーツ時の水分補給では、「喉が渇いてから飲む」のではなく、計画的に水分補給することが大切です。
喉の渇きを感じたときには、すでに体内の水分が失われ始めているとされています。
暑い環境での高強度の運動では、1時間に約2Lの汗をかくこともあります(15分で約500mL)。
一度にたくさん飲んでも、必要な水分がすぐに体へ行き渡るわけではありません。
飲み過ぎるとお腹が重くなり、プレーしづらくなることもあります。
そのため、15〜20分ごとに100〜200mL程度を目安に、こまめに水分補給するのがおすすめです。
ただし、この量はあくまで一般的な目安です。
大量に汗をかく競技や暑熱環境では、この量だけでは補給が追いつかない場合もあります。
練習前後の体重変化から自分の発汗量を把握し、それに応じて補給量を調整することが大切です。

熱中症対策におすすめの飲み物とは?

水だけでは水分が体に残りにくい理由
長時間の運動では、汗と一緒にナトリウムなどのミネラル(体の働きを助ける栄養素)も失われます。
これらは体の水分を保ったり、筋肉や神経が正常に働いたりするために必要な栄養素です。
そのため、水だけでなく、ミネラルも補給できる飲み物を選びましょう。

水・スポーツドリンク・麦茶の選び方
短時間の運動や日常生活では、水や麦茶でも十分な場合があります。
一方で、大量に汗をかく場合は、スポーツドリンクなどを活用すると効率よく水分とミネラルを補給できます。

水分補給は、ミネラル補給のチャンスにもなる
スポーツドリンクは、汗で失われやすい水分やナトリウムを補給するのに役立ちます。
一方で、体の中では数十種類のミネラルが働いており、そのうち16種類は食事から摂る必要がある「必須ミネラル」です。
必要な量は少なくても、運動パフォーマンスやコンディショニングを支える大切な役割があります。
必須ミネラルには、カルシウムや鉄、マグネシウム、亜鉛などがあります。それぞれ役割が異なり、カルシウムやマグネシウムは筋肉や神経の働きを助け、鉄は酸素を全身へ運び、亜鉛は体づくりや免疫機能を支える大切な栄養素です。
アスリートは、運動量の増加や成長、発汗などの影響により、鉄やカルシウムなどの栄養素が不足しやすくなることがあります。
基本は毎日の食事や補食でバランスよく摂ることが大切です。
そのうえで、汗をたくさんかく日や長時間の運動では、水分補給の機会を活用し、目的に応じて複数のミネラルを含む飲料を取り入れる方法もあります。
やってはいけない水分補給
次のような飲み方は、熱中症対策として十分とはいえません。
- 喉が渇くまで飲まない
- 水だけを大量に飲む
- カフェインを多く含む飲み物だけで済ませる
大量の発汗時は、水分だけでなく電解質(ナトリウムなどのミネラル)も補給できる飲み物を選びましょう。
運動時間や汗の量に応じて飲み物を使い分けることが、熱中症予防とパフォーマンス維持につながります。
熱中症を防ぐためのポイント

WBGT(暑さ指数)を確認しよう
WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・日差し・風などをもとに算出される、熱中症の危険度を示す指標です。
気温がそれほど高くなくても、湿度が高い日は熱中症のリスクが高まるため、気温だけでは安全かどうか判断できません。
学校や大会では、WBGTを参考に練習内容や休憩時間、運動の中止などを判断することがあります。
ニュースや天気予報でも「熱中症警戒アラート」が発表されることがあります。
部活動やスポーツをするときは、天気だけでなくWBGTも確認する習慣をつけましょう。

指導者・保護者ができるサポート
熱中症予防は、選手本人だけでなく、周囲のサポートも欠かせません。
- WBGT(暑さ指数)に応じて練習内容や休憩時間を調整する
- 練習時間に合った量の飲み物を準備できるよう声をかける
- 朝食や補食で水分・栄養を補給できる環境を整える
- 体調不良を我慢せず相談できる雰囲気をつくる
こうした環境づくりが、熱中症の予防だけでなく、安全にスポーツを続けることにもつながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 熱中症対策に一番おすすめの飲み物は何ですか?
A. 一つの飲み物がすべての場面で最適とは限りません。
短時間の運動や日常生活では水や麦茶、長時間の運動や大量に汗をかく場合はスポーツドリンク、脱水症状が疑われる場合は経口補水液など、運動時間や発汗量、体調に合わせて使い分けることが大切です。
Q. スポーツドリンクは毎日飲んでもいいですか?
A.日常生活や短時間の運動では、水や麦茶で十分な場合が多くあります。
スポーツドリンクは糖質も含まれているため、長時間の運動や大量に汗をかく場面など、必要に応じて活用しましょう。
Q. 0kcal(ゼロカロリー)のスポーツドリンクでも大丈夫ですか?
A.0kcalや低カロリーのスポーツドリンクは、水分や電解質の補給に役立ちます。
短時間の運動や日常生活では0kcalタイプでも十分な場合があります。
一方、長時間・高強度の運動では糖質も必要になるため、目的に応じて使い分けましょう。
Q. 水だけでは水分補給になりませんか?
A. 短時間の運動や日常生活では、水だけでも問題ない場合があります。
しかし、長時間の運動や大量に汗をかく場面では、汗と一緒にナトリウムなどの電解質も失われます。
そのため、水だけでなく電解質を含む飲み物を選ぶことが大切です。
Q. 経口補水液はどんなときに飲めばよいですか?
A.経口補水液は、熱中症が疑われる場合や大量の発汗・下痢・嘔吐などで脱水状態になった際の水分・電解質補給を目的とした飲み物です。
日常的な水分補給や通常のスポーツ時には、スポーツドリンクや水・麦茶などを状況に応じて選びましょう。
Q. 熱中症対策タブレット(塩分タブレット)は必要ですか?
A.熱中症対策タブレットは、汗で失われるナトリウムなどの補給に役立ちます。
ただし、水分を補給するものではないため、水やスポーツドリンクなどと組み合わせて活用しましょう。
大量に汗をかく場面で、水分補給とあわせて活用するとよいでしょう。
Q. 水分補給はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. 一般的には、15〜20分ごとに100〜200mL程度を目安にこまめに補給することが推奨されています。
ただし、発汗量は競技や運動強度、気温・湿度によって異なるため、自分の発汗量に合わせて調整しましょう。
まとめ

熱中症対策の水分補給は、「喉が渇いてから飲む」のではなく、計画的に補給することが基本です。
今日から実践したいポイントは次の3つです。
- 運動前・運動中・運動後にこまめに水分補給する
- 運動時間や発汗量に応じて飲み物を選ぶ
- WBGT(暑さ指数)も確認し、安全な環境で運動する
水分補給は、熱中症を防ぐだけでなく、集中力や持久力を維持し、本来のパフォーマンスを発揮するための大切なコンディショニングです。
毎日の水分補給を少し見直すことが、安全にスポーツを楽しみ、ベストパフォーマンスを発揮する第一歩です。
自分の運動時間や発汗量に合った水分補給を心がけ、暑い季節も安全に競技へ取り組みましょう。
参考文献・出典
- 熱中症環境保健マニュアル2022
発行元:環境省
https://www.wbgt.env.go.jp/ - 熱中症診療ガイドライン2024
発行元:日本救急医学会
https://www.jaam.jp/ - スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第6版)
発行元:公益財団法人 日本スポーツ協会(JSPO)
https://www.japan-sports.or.jp/publish/tabid776.html - Physiological Consequences of Hypohydration: Exercise Performance and Thermoregulation
発行元:Medicine & Science in Sports & Exercise
著者:Michael N. Sawka
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1602938/ - Exercise and Fluid Replacement(Position Stand)
発行元:American College of Sports Medicine(ACSM)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17277604/ - Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance
発行元:Academy of Nutrition and Dietetics
https://www.jandonline.org/ - Effects of Sodium Intake on Health and Performance in Endurance and Ultra-Endurance Sports
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発行元:The Journal of Nutrition
https://doi.org/10.1093/jn/119.suppl_12.1832 - 日本人の食事摂取基準(2025年版)
発行元:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html - 栄養に関する基礎知識
発行元:国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet01/ - 競技者育成のための指導者向け栄養資料
発行元:公益財団法人日本スポーツ協会
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/Coach/2017_h29/20170729_coach_eiyou_slide.pdf

執筆者:丸井 遥
管理栄養士、スポーツ栄養プランナー、オンラインフードクリエイター。
病院・介護施設で栄養指導や栄養管理を経験。現在はフリーランスとして、スポーツ栄養教材の制作や栄養相談、記事執筆などを行っている。
また、栄養や子育てに役立つ情報をnoteでも発信中。
専門的な内容を、わかりやすく実践しやすい形で伝えることを大切にしている。








