頑張りすぎが逆効果?オーバートレーニングの症状・原因・回復・予防を管理栄養士が解説

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「毎日練習しているのに、なぜか記録が伸びない」「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」。
そんな状態が続いていませんか?

スポーツでは練習が欠かせませんが、トレーニングによる負荷に対して十分な回復ができない状態が続くと、頑張っているのにパフォーマンスが低下してしまうことがあります。

その背景には、トレーニングによる負荷と回復のバランスが崩れている可能性があります。

この記事を読めば、オーバートレーニングの症状や原因、見分けるためのサイン、回復・予防のポイントが分かります!
管理栄養士・スポーツ栄養プランナーが分かりやすく解説します。

※この記事では、長期的なパフォーマンス低下などを伴う「オーバートレーニング症候群」を中心に解説します。

この記事でわかること

  • オーバートレーニングとは何か
  • オーバートレーニングでみられる症状・サイン
  • オーバートレーニングの原因
  • 回復を支える食事・睡眠・休養
  • オーバートレーニングを予防するポイント

オーバートレーニングとは?頑張りすぎでパフォーマンスが低下することも

オーバートレーニングとは、単に「たくさん練習すること」ではありません。
トレーニングで体に負荷をかけると、その後に食事や睡眠、休養をとりながら回復し、次のトレーニングに備えます。

しかし、トレーニングによる負荷に対して十分な回復が追いつかない状態が長く続くと、パフォーマンスの低下や疲労、気分の変化などがみられることがあります。

つまり、
「練習する」だけではなく「回復する」ところまでがトレーニング
と考えることが大切です。

なお、数日〜短期間の疲労や一時的なパフォーマンス低下が、すべてオーバートレーニング症候群というわけではありません。
スポーツ医学では、短期間の負荷増加による「オーバーリーチング」と、長期にわたりパフォーマンス低下が続くオーバートレーニング症候群は区別されています。

オーバートレーニングの症状|こんなサインに注意

オーバートレーニングの症状は、「足が痛い」のように1つだけ現れるとは限りません。
体・パフォーマンス・気持ちなど、さまざまな変化として現れる可能性があります。

身体やパフォーマンスにあらわれるサイン

例えば、次のような変化です。

  • 疲れがなかなか取れない
  • 以前より記録やパフォーマンスが低下する
  • 筋肉の疲労感が続く
  • 食欲が落ちる
  • 眠りにくい、睡眠の状態が変わる
  • 体調を崩しやすくなる

「いつもと同じ練習なのに、なぜか体が重い」という変化も見逃したくないポイントです。

気持ちにあらわれるサイン

体だけでなく、

  • 練習へのやる気が出ない
  • 集中しにくい
  • イライラする
  • 気分が落ち込む

といった精神面の変化がみられる場合もあります。

ただし、1つ当てはまったからといって、オーバートレーニングと判断することはできません。
オーバートレーニング症候群は、疲労やパフォーマンス低下が続く期間や、睡眠・食欲・気分などの変化を総合的に確認し、ほかの病気や栄養不足などの可能性も除外しながら判断します。

オーバートレーニングから回復するために、トレーニングの負荷を減らし、睡眠・休養で回復時間を確保する2つのポイント

オーバートレーニングの原因|なぜ回復できなくなる?

オーバートレーニングは、単に「練習しすぎた」ことだけが原因とは限りません。
トレーニングによる負荷に対して、食事や睡眠、休養などによる回復が追いつかない状態が続くことが大きく関係します。

練習による負荷が大きすぎる

「もっと強くなりたい」「試合に出たい」と思うほど、休むことに不安を感じる選手もいるでしょう。

しかし、

  • 強度の高い練習が続く
  • 大会や遠征が続く
  • 休養日が少ない
  • 部活動に加えて自主練習を続ける

など、体が回復できる以上の負荷が積み重なると、疲労が抜けにくくなる可能性があります。

さらに、オーバートレーニング症候群には、トレーニングだけでなく、学校生活や人間関係など、日常生活で受けるさまざまなストレスも関係すると考えられています。

「練習量だけ」を見るのではなく、生活全体を含めて負担が大きくなっていないか確認することが大切です。

食事・睡眠・休養が追いついていない

負荷が大きくなくても、回復するためのエネルギーや時間が足りなければ、疲労は蓄積しやすくなります。
特に成長期のアスリートは、運動だけでなく、成長や日常生活にもエネルギーを必要とします。

運動による消費量に対して食事から摂るエネルギーが不足し、体のさまざまな機能に使えるエネルギーが少なくなった状態を「低エネルギー利用可能性(LEA)」といいます。

LEAが続くと、健康やパフォーマンスにさまざまな悪影響を及ぼす可能性があり、男女どちらのアスリートにも起こり得ます。

また、十分な睡眠や休養を確保できなければ、次の練習までに回復しきれないこともあります。

「どれだけ練習したか」だけでなく、「それに見合った食事・睡眠・休養がとれているか」までセットで考えましょう。

オーバートレーニングの原因となる、練習による負荷と食事・睡眠・休養による回復のバランスが崩れ、疲労が積み重なる流れ

オーバートレーニングから回復するために大切なこと

まずはトレーニング量を見直す

疲労やパフォーマンス低下が続いているのに、「もっと練習しなきゃ」と負荷を増やすのは逆効果になる可能性があります。
オーバートレーニングが疑われる場合は、状態に応じてトレーニング量や強度を減らし、十分な回復期間を確保することが基本です。

「何日休めば回復する」という一律の答えはありません。
状態によって回復までの期間は異なります。

症状が長く続く、日常生活にも影響している、明らかなパフォーマンス低下が続く場合などは、無理に練習を続けず、医師やスポーツ医科学の専門家に相談しましょう。

睡眠と休養で回復する時間をつくる

睡眠は、アスリートの健康や回復、パフォーマンスを支える重要な要素です。

ただし「アスリートなら全員○時間寝ればよい」という単純なものではなく、年齢や練習量、競技スケジュールなどによって必要な睡眠は異なります。
スポーツ選手向けの睡眠に関する専門家のコンセンサスでも、個人に合わせた睡眠管理の必要性が示されています。

休むことは、練習をサボることではありません。
次の練習で力を発揮するための大切な準備です。

アスリートに必要な睡眠時間や睡眠の質を整えるポイントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶ 関連記事:寝ることもトレーニング!アスリートの睡眠時間と質を高める食事のポイント

オーバートレーニングでみられる体・パフォーマンス・気持ちの変化や症状のサイン

オーバートレーニングの回復を支える食事・栄養

オーバートレーニングに「これを食べれば治る」という食品はありません。

しかし、十分な食事をとることは、トレーニングからの回復や健康、パフォーマンスを支えるうえで欠かせません。スポーツ栄養のポジションスタンドでも、適切なエネルギーや栄養素の摂取がパフォーマンスと回復に重要であることが示されています。

まずは必要なエネルギーを確保する

運動量が多い選手は、その分だけ必要なエネルギー量も増えます。
特に中学生・高校生は、スポーツだけでなく成長にもエネルギーが必要な時期です。

まずは3食を基本として、主食+主菜+副菜を意識してみましょう。

3食だけでは必要な量を食べきれない場合は、おにぎり、パン、バナナ、乳製品などの補食を活用する方法もあります。

補食について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶ 関連記事:アスリートの補食とは?タイミング・量・おすすめの食べ物を解説

糖質・たんぱく質を中心にバランスよく

練習後は、運動で使ったエネルギーを補うための糖質と、筋肉などの修復・適応を支えるたんぱく質を意識しましょう。

さらに、野菜や果物、乳製品などさまざまな食品を組み合わせることで、ビタミンやミネラルなどの栄養素も補いやすくなります。運動で汗をかいた場合は、水分補給も忘れないようにしましょう。

運動中の水分補給について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶ 関連記事:熱中症を防ぐ水分補給|スポーツ時の飲み方・タイミングを解説

「プロテインさえ飲めば大丈夫」ではありません。
特定の栄養素だけに注目するのではなく、まずは毎日の食事全体を整えることが大切です。

トレーニング後の回復を支える糖質・たんぱく質・ビタミンやミネラル・水分と補食の例

オーバートレーニングを予防する4つのポイント

オーバートレーニングを予防するために意識したいのは、次の4つです。

  1. 練習量・強度を調整する
  2. 休養を取り入れる
  3. 食事・補食で必要なエネルギーを確保する
  4. 睡眠時間を確保する

さらにおすすめなのが、毎日のコンディションを簡単に記録することです。

「今日の記録は何秒だった?」だけでなく、
「疲れは残っていない?」「ちゃんと眠れた?」「食欲はある?」「練習したいと思える?」
と、自分の体と気持ちにも目を向けてみましょう。

小さな変化に早く気づくことが、コンディションを大きく崩す前の対策につながります。

オーバートレーニングについてよくある質問(FAQ)

Q. オーバートレーニングは何日休めば回復しますか?

A. 回復に必要な期間は状態によって異なるため、「○日休めば大丈夫」と一律には決められません。
疲れやパフォーマンス低下が長く続く場合は、自己判断で練習を続けるのではなく、専門家への相談も検討しましょう。


Q. 疲れが取れないだけでもオーバートレーニングですか?

A. 疲労だけでオーバートレーニングと判断することはできません。
疲れが取れない、パフォーマンスが低下する、睡眠や食欲が変化する、練習への意欲が低下するなど、複数の変化やその期間を確認することが大切です。


Q. オーバートレーニングは食事で予防できますか?

A. 十分なエネルギーや栄養を摂ることは回復を支える大切な要素ですが、食事だけで予防できるものではありません。
トレーニング・食事・睡眠・休養をセットで考えることが重要です。

まとめ|強くなるためには「休むこと」もトレーニング

スポーツでは、「頑張れば頑張るほど強くなる」と思ってしまいがちです。
しかし、体は練習している時間だけで強くなるわけではありません。

練習する → 食べる → 眠る・休む → 回復する → 次の練習へ
このサイクルまで整って、トレーニングの成果につながります。

最近「疲れが取れない」「記録が伸びない」と感じたら、練習を増やす前に、食事・睡眠・休養が足りているか振り返ってみましょう。

頑張ることと同じくらい、しっかり回復することも、強くなるためのトレーニングのひとつです。

今日から1つだけやるなら

練習が終わったら、その日の「疲れ」を3段階で記録してみましょう。

例えば

の3段階だけでもOKです。

毎日頑張っていると、「疲れていて当たり前」と思って、小さな変化を見過ごしてしまうことがあります。

記録を続けて「いつもより疲れている日が続いている」と気づいたら、睡眠や食欲、食事量、練習へのやる気なども振り返ってみましょう。

「いつもと違う」に早く気づくことが、コンディションを大きく崩す前の対策につながります。
疲労が続いているときは、さらに頑張るのではなく、休養や練習量を見直すことも大切です。

参考文献

Prevention, diagnosis, and treatment of the overtraining syndrome: Joint consensus statement of the European College of Sport Science and the American College of Sports Medicine
発行元:Medicine & Science in Sports & Exercise
著者:Meeusen R, Duclos M, Foster C, et al.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23247672/

2023 International Olympic Committee’s (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs)
発行元:British Journal of Sports Medicine
著者:Mountjoy M, et al.
https://bjsm.bmj.com/content/57/17/1073

Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance
発行元:Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics
著者:Thomas DT, Erdman KA, Burke LM
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26920240/

Sleep and the athlete: narrative review and 2021 expert consensus recommendations
発行元:British Journal of Sports Medicine
著者:Walsh NP, et al.
https://bjsm.bmj.com/content/55/7/356

執筆者:丸井 遥

管理栄養士、スポーツ栄養プランナー、オンラインフードクリエイター。

病院・介護施設で栄養指導や栄養管理を経験。現在はフリーランスとして、スポーツ栄養教材の制作やダイエット栄養相談、記事執筆などを行っている。

また、栄養や子育てに役立つ情報をnoteでも発信中。
専門的な内容を、わかりやすく実践しやすい形で伝えることを大切にしている。

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