野球をプレーする子どもたちにとって、「野球肘」は避けて通れない大きな悩みのひとつです。投球時や投球後に肘が痛む、思うように腕が伸ばせないといった症状に心当たりはありませんか?放置すると日常生活にも支障をきたす可能性もあるため、早めの対処が何より大切です。
今回は、野球肘の原因や症状、治療法、そして日頃からできる予防法まで、わかりやすく解説します。
野球肘にみられる症状

野球肘の主な症状は、投球時や投球後に肘の内側・外側・後方のいずれかに現れる痛みです。
初期のうちは「少し違和感がある」程度ですが、放置すると肘の曲げ伸ばしがしにくくなったり、「引っかかる」ような感覚(ロッキング)が出たりすることもあります。
さらに症状が進むと球速が落ちたり、しびれが出たりと、プレーだけでなく日常生活にも支障をきたすことがあります。
野球肘の原因

野球肘の最大の原因は、投球動作を繰り返すことで肘にかかる過度なストレスです。特に成長期の子どもは、骨や軟骨がまだ完全に発達していないため、小さな負担の積み重ねでも損傷しやすい傾向があります。
さらに、無理な投球フォームや投げすぎ、十分な休養を取らないことも悪化の要因です。柔軟性や筋力が不足していると、体全体で投げる動作ができず、肘だけに負荷が集中しやすくなります。
こうした状態が続くと、内側や外側、後方の骨や靭帯にダメージが起こり、痛みや可動域の制限へとつながってしまいます。正しいフォームと適切な休養を心がけることが、野球肘の予防には重要です。
野球肘の治療法・回復期間

野球肘は痛む部位や損傷の程度によって、治療法も回復にかかる期間も異なります。ここでは、内側・外側・後方の3つのタイプに分けて、その特徴と回復までの流れをわかりやすく解説します。
肘の内側(骨・靭帯)が損傷した場合
内側型野球肘は、投球動作の「コッキング期」や「加速期」に、肘の内側へ強い牽引力(引っ張る力)が加わることで発生します。主に靭帯や筋肉の付着部に負担がかかるため、成長期の子どもからプロ選手まで幅広くみられます。
治療法
【保存療法】
初期や軽症であれば、数週間〜1か月の投球禁止と安静が基本です。炎症を抑えるためのアイシングや薬物療法を行い、痛みが落ち着いてからはストレッチや筋力トレーニングで徐々に再発を防ぎます。投げ方の見直しも重要なステップです。
【手術療法】
靭帯が完全に断裂している場合や保存療法で改善しない場合には、靭帯再建術(トミー・ジョン手術)が検討されます。特にプロ選手など高いレベルでの競技復帰を目指す人に行われる手術です。
回復期間
軽症の場合は1〜3か月で投球復帰できることが多いですが、靭帯再建術を行った場合は実戦復帰までに10か月〜1年半ほどかかります。
肘の外側(骨・軟骨)が損傷した場合
外側型野球肘は、ボールを投げ終わる「フォロースルー期」に肘の外側へ圧迫やねじれの力が繰り返しかかることで発生します。成長期の選手に多く、重症化しやすいタイプとしても知られています。
治療法
【保存療法】
初期の離断性骨軟骨炎では、3か月から半年以上の投球禁止が必要です。肘への負担をなくし、骨や軟骨の自然な修復を待ちます。
【手術療法】
剥がれた骨や軟骨のかけらがある場合や、保存療法で改善が見られないときには、関節鏡を使って損傷部を処置します。必要に応じて骨軟骨の移植を行うケースもあります。
回復期間
保存療法であれば3か月〜半年程度が目安ですが、手術後は術式や回復状況によって半年から1年ほどかかる場合もあります。放置すると肘が変形したり、動かしにくくなったりするおそれがあります。
肘の後方(腱・骨端線など)が損傷した場合
後方型野球肘は、投球時に肘を伸ばしきった際、あるいは変化球を投げたときに肘の後ろで骨同士がぶつかって発生します。投げすぎやフォームの崩れによって発症し、特に成長期の選手は骨端線に負担がかかりやすいとされています。
治療法
【保存療法】
安静とアイシングで炎症を抑え、必要に応じて鎮痛薬を使用します。リハビリでは、肘を伸ばしすぎないフォームを身に付け、再発防止を図ります。
【手術療法】
保存療法で痛みが改善しない場合や骨棘(こつきょく:余分な骨の突起)が大きい場合には、関節鏡で骨棘を除去する手術が行われます。
回復期間
軽症なら数週間〜1か月ほどで改善することも多く、手術後でも数週間〜数か月でプレーに復帰できるケースが一般的です。症状が早期に発見できれば、比較的短期間での回復が期待できます。
野球肘の予防法
野球肘は、日々の練習の積み重ねによって少しずつ肘に負担がかかり、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
予防には、正しい投球フォーム・練習量の管理・ストレッチといった基本を大切にし、大人(指導者・保護者)が見守りながらサポートすることが大切です。
正しい投球フォームを習得する
肘に過度な負担をかけないよう、体全体を使った自然な投球フォームを身に付けることが野球肘予防の基本です。手投げのように腕だけで投げると、肘に集中して大きな力がかかります。肩・体幹・下半身を連動させながら投げることで、力を分散しやすくなります。
ポイントは「肘を高く上げすぎず、肩のラインより下がらない位置を保つ」ことです。体の開きが早くならないように意識し、無理のない範囲でスムーズに腕を振れる姿勢を整えましょう。動画を撮ってフォームを確認するのも効果的です。
投球数・練習量を管理する
練習のしすぎや連投は、最も代表的な野球肘の原因です。小中学生の場合、全力投球は1日50球程度、週4日以内が目安とされています。
また、週に1〜2日は完全休養の日をもうけることが望ましいでしょう。痛みや違和感を覚えたら、練習を中止して休むことが何より大切です。安静にすることも立派な「治療のひとつ」です。
努力家の選手ほど無理をしがちです。体のサインを見逃さず、練習量は保護者・指導者がチェックする習慣をつけましょう。
練習の前後にストレッチを行う
野球肘の予防には、肘だけでなく全身の柔軟性を高めることが重要です。
肩甲骨周り、股関節、体幹、前腕の筋肉など、投球動作に関わる部位を日頃からしっかりとストレッチしておくことで、肘への負担を軽減できます。練習の前後には必ずストレッチの時間を設け、体をしっかりケアする習慣を身に付けましょう。
ここでは、野球肘予防に効果的なストレッチをいくつかご紹介します。
前腕(肘の内側・外側)のストレッチ
前腕の筋肉は、投球時に大きな力を発揮する部位です。内側と外側の両方をバランスよく伸ばすことで、肘への負担を和らげることができます。
・手のひら側を伸ばす(内側)
1.腕を前に伸ばし、手のひらを上向きにします。
2.反対の手で指先を持ち、体側にゆっくりと引いて前腕の内側を伸ばしましょう。この状態を10~20秒キープします。
3.反対の手も同様に行います。
・手の甲側を伸ばす(外側)
1.腕を前に伸ばし、手のひらを下向きにします。
2.反対の手で指先を持ち、体側にゆっくりと引いて手の甲側を伸ばします。こちらも10~20秒保持しましょう。
3.反対の手も同様に行います。
肩周りのストレッチ
肩甲骨周りの柔軟性は、投球フォームの安定性に直結します。肩周りをしっかりとほぐすことで、スムーズな投球動作が可能になり、肘への負担も軽減されます。
・肩甲骨を寄せる
1.両腕を胸の前で直角に上げ、肘から先をつけます。
2.肩甲骨を寄せるように胸を張りながら、両腕を後方にゆっくりと引きましょう。この姿勢を10秒間キープします。
肩甲骨周りの筋肉がほぐれるのを意識しながら行うと効果的です。
下半身のストレッチ
投球動作は下半身からのパワーが重要です。股関節やもも裏の柔軟性を高めることで、体全体をバランスよく使った投球ができるようになり、結果的に肘への負担を減らすことにつながります。
・股関節周り
1.開脚して片膝を曲げ、まっすぐな足の方へ体を倒します。この状態を10秒キープします。
2.反対側も同様に行いましょう。
股関節の可動域が広がることで、投球時の体重移動がスムーズになります。
・もも裏(ハムストリングス)
1.椅子に座り、背筋を伸ばして前屈し、もも裏を伸ばします。30秒キープを3セット行いましょう。
ハムストリングスの柔軟性は、下半身の安定性を高め、投球フォーム全体のバランス向上に役立ちます。
まとめ
野球肘の予防には、正しい投球フォームの習得、投球数の管理、そして全身のストレッチが欠かせません。違和感や痛みを覚えたらすぐに投球を中止し、適切な休養を取ることが大切です。
早期発見・早期対応が、長く野球を楽しむためには重要です。日頃から体のケアを心がけ、無理のない練習を続けていきましょう。
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