スポーツにおけるミネラルは、エネルギー代謝、筋肉の収縮、酸素の運搬、神経伝達、体液バランスなど、身体の多くの重要な機能をサポートします。
ミネラルはすべての栄養素の土台になる基礎栄養ですが、単独成分の過剰摂取は危険性があるので、総合的に摂るようにして下さい。
ミネラルの役割
1、カルシウム
筋肉の収縮
神経伝達
など
不足で筋疲労促進
骨や歯の形成、筋肉の収縮、神経伝達に必要不可欠。筋肉の収縮はカルシウムの役割です。
カルシウムの不足は、骨密度の低下を引き起こし、ストレス骨折のリスクを高めるとされています。またカルシウムは、運動後の筋肉の回復にも関与します。
2、マグネシウム
筋肉の弛緩
神経伝達
エネルギー代謝
など
不足で筋けいれん
エネルギー代謝に不可欠で、筋肉の弛緩(緩む)や神経伝達に関与。筋肉のけいれんを防ぎ、疲労の軽減に寄与します。筋肉はカルシウムで収縮し、マグネシウムで弛緩します。
汗によるマグネシウムの流出や運動による消耗が、筋肉疲労やけいれんの原因になります。マグネシウムサプリメントは「持久力向上や疲労軽減、こむら返りの予防」に寄与します。
3、カリウム
体液バランス
浸透圧の調整
ナトリウムの濃度調整
筋肉の収縮など
カリウムの役割
カリウムは、筋肉の収縮、神経伝達、体液バランスの維持に不可欠なミネラルです。特にナトリウムとのバランスで体内の浸透圧を調整し、心臓や筋肉の正常な機能をサポートします。また運動中の筋肉の収縮と弛緩に直接影響を与えます。
筋けいれんの原因に
運動中の筋肉の正常な収縮をサポートし、筋肉のけいれんや疲労を防ぐ役割があります。運動中や運動後のカリウムが不足すると、筋肉疲労やけいれんが起こりやすくなるとされています。
心拍数に影響
さらにカリウムは、心臓の機能にも影響を与え、心拍数の調整や血圧の維持に関与しています。特に持久力を要する運動では、カリウムの適切な補給がパフォーマンスの維持に重要です。
発汗でパフォーマンス低下
カリウムは発汗にも失われるため、激しい運動後のカリウム補給は回復のために非常に重要です。スポーツドリンクなどでのカリウム補給が推奨されており、これがパフォーマンスの維持に役立ちます。
4、鉄
酸素運搬
貧血防止
など
不足すると細胞が酸欠
鉄は赤血球内のヘモグロビンを形成し、酸素を筋肉に供給します。持久力スポーツにおいて特に重要。
運動による鉄分の消耗は、特に女性アスリートにおいて鉄欠乏性貧血のリスクを高める可能性があります。鉄サプリメントの摂取は持久力の向上に寄与することが報告されています。
血液の酸素運搬量
赤血球内のヘモグロビンは、酸素を運ぶ役割を担っています。鉄はヘモグロビンの構成成分で、鉄が不足するとヘモグロビンが少なくなり酸素運搬量が減ります。すると細胞が酸欠状態になり活力を失います。
吸収性の悪さを改善
鉄は吸収しづらい成分です。そこで注目されているのが「ヘム鉄」「キレート鉄」です。アミノ酸などと結合するので、吸収性がとても高くなります。
5、ナトリウム
保水
体液バランス
神経伝達
など
保水力のかなめ
体液バランスの維持、筋肉と神経の機能調整に関与。発汗によるナトリウムとカリウムの損失が運動パフォーマンスに影響を与えます。
ミネラル量と保水量
体内のミネラル量が少なくなると、それに応じた保水しかできません。どれだけ水を飲んでも、すぐに汗として放出されます。
激しい運動でのナトリウムやカリウム不足は、筋肉のけいれんや疲労、パフォーマンスの低下を引き起こすことが研究されています。適切な補給が推奨されています。
6、亜鉛
たんぱく質合成
DNA修復
免疫サポート
など
免疫や筋肉の修復
免疫機能のサポート、たんぱく質合成、DNA修復、テストステロンの生成に関与します。
亜鉛は回復期の免疫機能や筋肉修復に寄与し、運動後の回復にも役立つとされています。
7、セレン
抗酸化
など
酸化ストレス軽減
抗酸化作用を持ち、細胞を酸化ストレスから保護します。セレンの抗酸化特性が、運動後の酸化ストレスの軽減することが報告されています。
8、リン
エネルギー代謝
酸素供給促進
エネルギー(ATP)成分
エネルギー代謝において重要です。アデノシン三リン酸(ATP/A3P)は、エネルギー分子を構成し、筋肉の収縮や神経伝達をサポートします。
A3Pがエネルギーを放出すると、A2Pというエネルギー廃棄物として分解されます。しかしリンはA2PをA3Pに再処理して、再びエネルギーを放出させます。
またリンは体内で酸素供給を促進し、持久力を向上させるとされています。
9、ヨウ素
甲状腺ホルモン生成
代謝全体に影響
甲状腺ホルモンの生成に必要であり、これらのホルモンは代謝率を調整し、エネルギーの生成と消費をサポートします。
ヨウ素不足によって代謝機能が低下し、疲労感や運動パフォーマンスの低下が引き起こされる可能性があります。甲状腺ホルモンは、エネルギー代謝の調節に重要であり、運動能力にも関与しています。
10、クロム
糖エネルギー代謝
グルコース代謝を改善
血糖値を調整し、インスリンの働きをサポート。これにより筋肉が効率的にエネルギーを利用できます。
クロムの補給は、特に耐久性トレーニング中のグルコース代謝を改善し、筋肉におけるエネルギー利用効率を向上させます。クロム不足はインスリン感受性の低下につながる可能性があり、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼすことがあります。
11、マンガン
11. マンガン
酸化還元反応や酵素の機能をサポートし、エネルギー代謝、骨の健康、免疫機能に寄与します。抗酸化作用を持ち、運動による酸化ストレスを軽減します。
マンガンは微量元素、骨の強度をサポートし、運動中の衝撃やストレスに対する耐性を高めることが示されています。運動後の炎症や筋肉のダメージを抑える作用も報告されています。
12、モリブデン
エネルギ代謝補助
酸化ストレスの抑制
酵素の補因子として働き、代謝の解毒過程をサポートします。特に酸化ストレスの制御やエネルギー代謝に関与しています。
モリブデンは主にエネルギー生産に関与し、エネルギーを効率的に使用するために必要です。運動時の代謝ストレスを軽減する可能性が示唆されています。
13、硫黄
アミノ酸の構成要素
抗酸化作用
回復サポート
アミノ酸(メチオニンやシステイン)やグルタチオンといった重要な分子の構成要素で、抗酸化機能があります。また結合組織の健康維持にも寄与します。
筋肉や結合組織の修復において重要な役割を果たし、特に長期間の運動後の回復をサポートします。また硫黄を含むアミノ酸は抗酸化作用があり、運動後の筋肉のダメージ軽減にも効果的です。
ミネラルの種類
必須ミネラル
地球上にミネラルは100種類以上ありますが、その中で生命活動に必要なミネラルが16種類あります。それを「必須ミネラル」といいます。
主要と微量ミネラル
ミネラルは人体に必要な量によって、主要ミネラル7種類と微量ミネラル9種類に分けられます。微量ミネラル(1mg未満)といっても、不足すると重大な機能不全を起こします。
主要ミネラル7種類
カルシウム、リン、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウム
微量ミネラル
鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルト
汗で流出した持久系ミネラルを
丸ごと補給できるガゼル!
参考文献
- Weaver CM, Heaney RP. Calcium in Human Health. Springer. (2006).
- Nielsen FH, Lukaski HC. Update on the relationship between magnesium and exercise. Magnes Res. (2006).
- Woolf K, Noakes TD. The role of iron in enhancing athletic performance and health. Journal of Sports Sciences. (2005).
- Peeling P, et al. Iron Status and the Acute Post-Exercise Inflammatory Response in Athletes. PLoS ONE. (2009).
- Bergeron MF. Sodium: Major electrolyte in sports performance. Journal of Sports Science and Medicine. (2003).
- Casa DJ, et al. National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for Athletes. Journal of Athletic Training. (2000).
- Prasad AS. Zinc in Human Health: Effect of Zinc on Immune Cells. Mol Med. (2008).
- Maughan RJ, Burke LM. Sports Nutrition. Wiley-Blackwell. (2012).
- Williams MH, et al. Phosphate supplementation and exercise performance. Sports Med. (1998).
- Kreider RB, et al. Phosphorus and endurance exercise: Critical review and research findings. J Sports Sci Med. (2000).
- Zimmermann MB. Iodine deficiency and excess in children: Worldwide status in 2013. Endocrine Practice. (2013).
- Anderson RA. Chromium, glucose intolerance and diabetes. Journal of the American College of Nutrition. (1998).
- Hellerstein MK, et al. Effects of chromium supplementation on insulin sensitivity and glucose metabolism. Metabolism. (1994).
- Freeland-Graves JH, et al. Manganese: Biological importance and toxicology. Nutrition Research Reviews. (1999).
- Powers SK, Jackson MJ. Exercise-induced oxidative stress: Cellular mechanisms and impact on muscle force production. Physiol Rev. (2008).
- Rajagopalan KV. Molybdenum: An essential trace element in human health and disease. Annu Rev Nutr. (1991).
- Grimble RF. Sulfur amino acids, glutathione and immune function. Nutrition. (2006).
- Jones DP. Redox potential of GSH/GSSG couple: Assay and biological significance. Methods in Enzymology. (2002).
- Bergeron MF. Sodium: Major electrolyte in sports performance. Journal of Sports Science and Medicine. (2003).Medbo JI, et al. High-intensity exercise and potassium loss. Acta Physiologica Scandinavica. (1991).Shirreffs SM, Maughan RJ. Whole body and intracellular dehydration during exercise. International Journal of Sports Medicine. (1998).