
マラソンで理想のタイムを実現するには、レース1か月前からの食事管理が重要です。特に必須アミノ酸(EAA)を意識することで、筋肉分解を防ぎ、持久力を最大限に発揮できます。
今回は、レース前の食事のポイントから前日に避けるべき食品まで、マラソンランナーが知っておくべき栄養管理を徹底解説します。
マラソンランナーの食事の基本は「必須アミノ酸(EAA)」
マラソンランナーの食事管理において、最も重要なのは必須アミノ酸(EAA)の摂取です。
コンディショニングの基本は五大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)をバランス良く摂ることですが、ランナーの場合は特にEAAを意識した食事戦略が必要です。
なぜ必須アミノ酸(EAA)が大切なのか?
マラソンランナーにとってEAAが重要な理由は、主に3つの効果にあります。
筋肉分解を防げる
マラソンのような長時間の運動では、エネルギー源として筋肉を分解します。
筋肉が分解されてしまうと、後半でのペースダウンだけでなく、トレーニング後の回復に時間がかかるため、ランナーにとっては大きなデメリットです。
一方、運動前や運動中にアミノ酸を摂取することで、この筋肉分解を効果的に防ぐことができます。
アミノ酸の投与が筋肉の代謝に積極的な作用を及ぼすことは、研究でも示されています。
出典:鈴木 良雄「スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果」順天堂医学,2011,57(2),p.95-99
筋肉痛の軽減につながる
EAAの摂取は、運動による筋肉やその周りの組織の損傷や炎症を防ぐ効果があります。
これによって筋肉痛が軽減され、練習後や本番のレース後の回復が早まります。
出典:鈴木 良雄「スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果」順天堂医学,2011, 57(2),p.95-99
消化が必要なく、吸収力が高い
EAAの最大の特徴は、吸収スピードの早さです。アミノ酸は摂取後30分以内にその約6割が腸壁内に留まり、残りの約4割が血中に吸収されます。
一方、通常のたんぱく質は胃から小腸に送り出すまでに約3時間もかかります。この違いにより、レース直前や運動中でも胃腸に負担をかけることなく、必要なタイミングで効率良く栄養補給ができるのです。
出典:
内藤 博「腸管内におけるタンパク質の分解性」化学と生物,1981,18(8),p.551-558
堀川 蘭子「アミノ酸栄養の生理学的基礎に関する研究」栄養と食糧,1969,22(6),p.402-413
ランナーの必須アミノ酸(EAA)の摂り方
EAAを効果的に活用するためには、摂取のタイミングが重要です。
■普段のトレーニングの直前
もっとも効果的なのはトレーニング直前です。練習開始30分前に必須アミノ酸(EAA)を摂取し、血中アミノ酸量を維持することで、持久力の維持に役立ちます。
■トレーニング中・後
長時間の練習やレース中にエネルギー切れを感じたときにEAAを補給することで、後半のねばりを生み出せます。胃腸への負担が少ないため、運動中にも負荷なく摂取できます。
また、練習の1時間後も重要なタイミングです。EAAが筋肉分解を防ぎ、回復を促進します。
■寝る前
就寝前のEAA摂取により睡眠中の筋肉修復を促進します。特にハードな練習を行った日は、翌日の疲労軽減につながります。
これらのタイミングで手軽なアミノ酸を補給するなら、スポコラがおすすめです。ランナーが損傷しやすい靭帯、腱、筋膜などをつくるエラスチン、コラーゲンなどの線維プロテインを配合しており、けが予防も期待できます。
普段の食事だけでは不足しがちなEAAを、効果的なタイミングで補いましょう。
必須アミノ酸(EAA)を意識したマラソン1か月前からの食事のポイント
マラソンで最高のパフォーマンスを発揮するためには、レース1か月前からの計画的な食事管理が欠かせません。
ここでは、3~4週間前、1週間前、当日に分けて食事のポイントを解説します。
レースの3~4週間前
レース3~4週間前の食事の基本は「バランスの良い食事」です。
日々のコンディションを支える基本として、エネルギー源となる糖質、身体をつくるたんぱく質、身体の調子を整えるビタミン・ミネラルなどをバランス良く摂取しましょう。
この時期に最も重要なのは、トレーニングとセットで必須アミノ酸(EAA)を補給することです。
特にポイント練習の1時間後は欠かさずEAAを摂取して、疲労回復に役立てます。練習で追い込んだ筋肉の修復を促進し、次の練習に向けたコンディションを整えることで、レースに向けた質の高いトレーニングを継続できます。
レースの1週間前
レース1週間前からは、以下の3つを意識しましょう。
・ウォーターローディング
脱水対策を始めましょう。普段より多めに水分を摂取(目安:1日2~3L)して、レース中の脱水リスクを軽減します。喉が渇く前に飲む習慣を意識することが重要です。
・脱カフェイン・禁酒
カフェイン・アルコールを控えることで、利尿作用を抑え、水分保持力を高めます。また、自律神経の安定や、レース中のカフェイン効果を高める目的もあります。
・アミノ酸ローディング
レース中の筋分解を防ぐため、1週間前からEAAを多めに摂取し、血中アミノ酸濃度を高めておきます。
特に就寝前など吸収の良いタイミングを活用し、体内にアミノ酸を蓄える習慣をつけることで、レース当日のパフォーマンス向上につながります。
レース当日
レース当日の食事は、タイミングと消化性を重視した補給がポイントです。
固形物はなるべくレーススタートの3時間前までに済ませ、直前のエネルギー補給は、ゼリー飲料やドリンク等の消化に負担がかからないものを中心にするのが理想的です。
スタートの直前に必須アミノ酸(EAA)を摂取しましょう。筋肉分解を防ぎ、持久力を維持できます。
レース中は、ミネラルで「ねばりの後半」を支えることも重要です。10kmごとを目安に、電解質(ナトリウム・マグネシウム・カリウム等)を含んだ塩飴・ドリンクを摂取することをおすすめします。
ミネラル不足は運動機能低下の原因となるため、単なる水では逆効果になる可能性もあるため、ミネラル入りの補給ドリンクが最適です。
レース直後は、糖質で枯渇したエネルギーを補います。コーラなどの炭酸飲料(酸素供給)がよく飲まれます。筋肉の疲労回復としては消化の要らないアミノ酸がおすすめです。
その後落ち着いたら、たんぱく質、炭水化物、ビタミン・ミネラルをバランス良く含んだ食事をとり、身体をしっかりと回復させましょう。
マラソン前日の食事で避けたいものは?
マラソン前日の食事では、内臓への負担を軽くし、胃腸トラブルを避けることが最優先です。普段は健康に良いとされる食品でも、前日だけは避けた方が良いものがあります。
脂質の多いもの(揚げ物、焼肉など)
脂質の多い食品は消化が遅く、胃に長時間残るため、走行中に胃もたれやだるさの原因となります。
食品例:から揚げ、とんかつ、フライドポテト、焼肉、ピザなど
食物繊維が豊富なもの(根菜類、豆類、きのこ類など)
食物繊維が豊富な食品は消化に時間がかかり、腹痛・ガス・膨満感の原因になる可能性があります。
普段は健康に良い食品ですが、レース前だけは控えめにすることが重要です。
食品例:ごぼう、れんこん、ひじき、玄米、納豆など
生もの・食べ慣れていないもの
生ものや食べ慣れていない食品は、食中毒や胃腸トラブルのリスクを高めます。
レース前は免疫力も下がりやすいため、特に慎重になる必要があります。
食品例:刺身、寿司、半生肉、火の通っていない貝類、初めて食べる外国料理など
乳製品(特に乳糖不耐症の方)
乳製品は体質によってお腹がゆるくなったり、腹痛の原因になる可能性があります。特に乳糖不耐症の方は注意が必要で、植物性ミルクに置き換えるのも良い選択肢です。
食品例:牛乳、ヨーグルト、チーズ、クリームなど
加糖飲料・糖アルコール入り飲料
加糖飲料や糖アルコール入り飲料は、血糖値の乱高下を引き起こし、下剤のような作用でお腹を壊すおそれがあります。
レース前の水分補給には、ミネラル入りの電解質ドリンクやアミノ酸ドリンクを選びましょう。
食品例:エナジードリンク、清涼飲料水など
プロテイン(過剰摂取に注意)
プロテインの過剰摂取は、たんぱく質過多や糖アルコールによって胃腸不調を起こす可能性があります。レース前日は適量を心がけ、胃腸への負担を最小限に抑えましょう。
プロテインとアミノ酸の違いや適切な摂取方法については、以下の記事で解説しています。
「トレーニング後のプロテインはNG!EAA・BCAAとの違いは?」
まとめ
マラソンで理想のタイムを実現するなら、必須アミノ酸(EAA)を軸とした食事を意識してみましょう。
レース1か月前からの計画的な栄養管理により、エネルギー切れや胃腸トラブルを防ぎ、持久力を最大限に発揮できます。