お知らせ

慢性捻挫患者に対するコラーゲン・エラスチン補給の臨床的意義と推奨

慢性捻挫の修復促進成分

はじめに

慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability: CAI)は、足関節靭帯の繰り返しの損傷および修復不全により発症する難治性病態です。機械的・機能的安定性の低下が進行すると、生活の質(QOL)や運動パフォーマンスにも深刻な影響を及ぼします。こうした中、靭帯・腱の構造的修復を栄養学的に支援する手段として、コラーゲンおよびエラスチンの補給が注目されています


◆ 栄養介入の基盤:靭帯構成成分への理解

1. コラーゲン(主にタイプI・III)

  • 靭帯の70~80%を占める主要な線維性タンパク質であり、強度と構造的安定性の根幹を担う。
  • 特にタイプIIIコラーゲンは、損傷後の組織再生初期において重要。

2. エラスチン

  • 靭帯の弾性回復力と伸展性維持に寄与する。
  • 加齢や慢性損傷で減少し、関節の柔軟性・順応性が低下する要因となる。

◆ コラーゲン補給の臨床エビデンス

Shaw G. et al. (2017)

  • 被験者:アスリート24名
  • 方法:運動前にコラーゲンペプチド(15g)+ビタミンC摂取
  • 結果:運動後の腱・靭帯コラーゲン合成マーカー(プロコラーゲンⅠ N末端ペプチド)が最大2倍に上昇
  • 結論:経口コラーゲンペプチドの摂取は靭帯組織の修復を栄養学的に促進する可能性Am J Clin Nutr. 2017;105(1):136–143

Clark KL et al. (2008)

  • 被験者:関節痛を有する中高年男女
  • 結果:12週間のコラーゲンペプチド摂取で関節痛が有意に減少
  • 示唆:構造的な支持組織の改善に寄与している可能性Curr Med Res Opin. 2008;24(5):1485–1496

◆ エラスチンと靭帯修復に関する基礎研究

Zhao et al. (2015) – ラットモデル研究

  • エラスチンが靭帯の柔軟性と修復において重要な役割を果たすことを確認
  • エラスチン合成が低下した靭帯では再損傷リスクが上昇し、組織の再構築に遅延がみられた

▶ 臨床応用の展望:

  • エラスチン自体の経口吸収率や分解の問題が課題であるが、エラスチンペプチドやLysyl oxidaseサポート栄養(銅、ビタミンC)との併用が新たな介入法として期待されている

◆ 栄養補給を治療計画に組み込む意義

▶ 理学療法との相乗効果:

  • 固有感覚トレーニングやバランス訓練と並行して靭帯の構造的リモデリングを分子レベルで支援できる。
  • 栄養介入は非侵襲的かつ患者アドヒアランスが高く、他の治療法と干渉しにくい。

▶ 患者満足度・再受傷予防の観点からも利点:

  • 軽度の症状にも対応可能であり、再受傷リスクを構造面から低減できる補完療法として期待される。

◆ 推奨実践ポイント(医療者向け)

項目推奨内容
対象患者慢性捻挫・再発性捻挫の既往あり/靭帯損傷歴がある患者
コラーゲン摂取量ペプチド型で10~15g/日、ビタミンCを併用(200~500mg)
エラスチン補給エラスチンペプチド製剤(推奨摂取量未確立)+銅・ビタミンC補助
注意点製品選定時は低分子加水分解型コラーゲンペプチドの吸収性が高いものを推奨

◆ 結論

慢性捻挫における靭帯の修復・再構築支援には、リハビリや理学療法に加えて、栄養的アプローチの併用が理にかなっています
特にコラーゲンおよびエラスチンは靭帯の主要構成成分であり、近年の研究ではそれらの経口摂取による合成促進・組織修復の補助的効果が報告され始めています。

臨床現場では、栄養介入を「治療の補完」として積極的に導入し、患者の機能回復と再受傷予防の一助とすることが、今後の治療の質をさらに高めると考えられます。

患者様向け説明シート

(慢性捻挫とコラーゲン・エラスチン)


慢性捻挫でお困りの方へ

コラーゲンとエラスチンの力で、関節の回復を内側から支える


◆ 慢性捻挫とは?

繰り返す足首の「ぐらつき」や「痛み」。
それは、足関節の靭帯がうまく回復できずに、関節が不安定になっているサインです。これを慢性捻挫と呼びます。


◆ 靭帯の回復には“材料”が必要です

靭帯は、コラーゲンエラスチンというタンパク質でできています。
これらは建物でいえば「鉄筋」のようなもの。損傷を修復するには、必要な材料を体の中から補うことが大切です。


◆ コラーゲンとは?

  • 靭帯の主成分(約70%)
  • 組織の強さや弾力を支える
  • 運動前に摂ることで合成が高まることがわかっています
    (例:コラーゲンペプチド+ビタミンCの併用)

◆ エラスチンとは?

  • 靭帯にしなやかさや伸縮性を与える成分
  • 加齢や損傷で減少しやすく、関節の柔軟性低下の原因に
  • エラスチンやその合成に必要な栄養素(ビタミンC・銅など)の補給が有効です

◆ なぜ「飲む」の?

靭帯や腱の材料となるタンパク質を補給することで、身体の内側から回復力を高め、リハビリや運動療法の効果をより高めることが期待されています


◆ 実際にどんな効果が?

  • 痛みの軽減
  • 再捻挫の予防
  • 関節の安定感の向上
  • 回復までの時間短縮 などが報告されています(一部研究より)

◆ 安全性は?

  • 食品由来の成分で、安全性の高い成分です
  • アレルギーや服用中の薬がある場合は医師・薬剤師にご相談ください

◆ どうやって取り入れる?

  • コラーゲンペプチド製剤(粉末やドリンクタイプ)
  • エラスチンペプチド製剤+栄養補助成分(ビタミンC、銅など)
  • 医師や薬剤師が適切な商品やタイミングをアドバイスいたします

関節の回復は、外からの治療+内からの補給で加速します。
ご興味があれば、ぜひ医療スタッフまでお気軽にご相談ください。